研究概要 |
研究代表者の山崎は以前、分子生物学的手法を用いて分泌型熱ショック融合蛋白質(gp96-Ig)を作成し、分泌型gp96-Ig遺伝子導入による癌拒絶および免疫原性の増加について報告した(J Immunol 163,5178-5182,1999)。その結果をふまえ、本研究の目的は分泌型gp96-Ig遺伝子の免疫遺伝子治療への応用の可能性について検討することである。 まず、マウスの系ですでに移植された腫瘍に対する分泌型gp96-Ig遺伝子導入細胞の治療効果を検討した。具体的にはC57BL/6マウスを使用し、マウス肺癌細胞LLC(10^5)またはリンパ腫細胞E.G7(2×10^5)を右側皮下に注射し、day3から放射線照射した10^6の分泌型gp96-Ig導入LLC(LLC-gp96-Ig)またはE.G7(E.G7-gp96-Ig)を左側皮下に注射してday0に接種した母細胞の腫瘍増殖速度を検討した。その結果、E.G7およびLLC両方の系で分泌型gp96-Ig遺伝子導入細胞がすでに移植された野生型の腫瘍の増殖を有意に抑制することが示された。コントールとして用いた抗原性の異なる分泌型gp96-Ig導入細胞(LLCに対してはE.G7-gp96-Ig、E.G7に対してはLLC-gp96-Ie)、および放射線照射した母細胞(分泌型gp96-Ig非導入細胞)は、治療効果を示さなかった。さらにE.G7-gp96-Igを注射したマウスの脾細胞を取り出し、in vitroでE.G7でrestimulateしCD8 CTLが誘導されていることを証明した。また、CD4ノックアウトマウスにおいても、E.G7およびLLC両方の系で分泌型gp96-Ig遺伝子導入細胞がすでに移植された野生型の腫瘍の増殖を有意に抑制することが示され、CD4細胞が腫瘍の拒絶に関与していないことが示された。 さらに、分泌型gp96-Ig導入細胞のCD8 CTLの増加、活性化をさらに検討するため、OT-1細胞(Ovalbumin特異的CD8細胞)を静注したマウスにE.G7-gp96-Igを投与し、in vivoでのOT-1細胞数の推移を検討した。その結果、E.G7-gp96-Igを投与されたマウスでは、OT-1細胞の著明な増加が見られ、E.G7-gp96-IgがCD8 CTLの増加、活性化をきたしている可能性が示唆された。
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