研究概要 |
喘息の気道炎症や気道過敏性において重要な役割が推測される分子群の中で、初年度にはinducible Nitric Oxide Synthase(iNOS)、Regulated upon activation, normal T-cell expressed and secreted(RANTES)、さらにはMuscarinic receptor M1、M2(CHRM1、2)の遺伝子の意義を検討した。iNOS遺伝子及びRANTES遺伝子のそれぞれのプロモーター領域に存在する多型は、転写効率の多寡に遺伝的な影響を与えることが知られている。また我々は機能的意義は未だ不明だがCHRM1とCHRM2遺伝子のコード領域にそれぞれ一塩基置換による遺伝子変異を発見した。約300名の喘息患者と約300名の健常人の検討から、iNOSプロモーター領域の機能的変異はアトピーの有無に、RANTES及びCHRM1、CHRM2の変異は気管支喘息の発症や気道過敏性の亢進に寄与していることを発見した。これらの一連の結果は2001年5月アメリカ胸部疾患学会、2001年11月日本アレルギー学会総会と2002年3月アメリカアレルギー学会(AAAAI)で学会発表すると同時に誌上発表した(J Allergy Clin Immunol2001:108(5):810-4.)。次年度も引き続き喘息の気道炎症や気道過敏性において重要な役割が推測される分子群の遺伝子多型が喘息やアレルギーの発症や病態に与える影響を検討した。特にRANTES、さらにはMacrophage migration inhibitory factor(MIF)の遺伝子の意義を検討した。RANTES遺伝子及びMIF遺伝子のプロモーター領域に存在する多型は、転写効率の多寡に遺伝的な影響を与えることがin vitroの検討で知られている。またこれらの多型はこれまでにアトピー性皮膚炎、サルコイドーシス、リウマチ性関節症などの種々の免疫炎症性疾患の発症や病態に影響を与えていることが既に報告されている。我々は約300名の喘息患者と約300名の健常人の検討から、RANTESプロモーター領域の機能的変異は気管支喘息、なかでも40歳以上からの喘息の発症に、MIF遺伝子の変異は抗原特異的なIgE応答の有無に寄与していることを発見した。これらの一連の結果は2002年3月アメリカアレルギー学会(AAAAI)、2002年11月日本アレルギー学会総会などで学会発表すると同時に誌上発表した(Am J Respir Crit Care Med 2002;166(5):686-90)。
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