研究概要 |
NK細胞膜上に発現する受容体の中でNKG2Dは細胞内にHTIMモチーフが欠損している活性型受容体である。ヒトおよびマウスのNKG2Dリガンドはそれぞれ、MHCA-MICB(Science,285:727,1999)とRAE-1・H60である(Immunity,12:721,2000)。NK細胞はNKG2Dリガンドを認識し,殺細胞効果を発揮する。そこで、この系を使った免疫遺伝子治療の可能性を検討すべくマウスモデルで以下の実験を継続中である。 まず、RAE-1遺伝子ファミリー(α,β,γ)の中で最も大きなRAE-1βに注目し、RAE-1βcDNAクローニングをマウス胎盤cDNAライブラリーよりPCR法にてクローニングを行い、シークエンスを確認した。 次に、RAE-1βに対する抗体が存在しないため、RAE-1βcDNAを、標識蛋白FLAG cDNAと融合させ、Tet・Onシステムで発現する系を作成し、マウス大腸癌C26に遺伝子導入を行ったが、FLAGが発現不可で、このシステムに問題があると考えられた。 そこで標識蛋白GFPを発現するレトロウイルスベクターpLEGFP-N1に組み込みRAE-1とGFPを融合蛋白として発現させる系を作成した。このレトロウイルスをC26とEL-4に感染させRAE-1-GFPを強制発現させたが、遺伝子導入後マウスに移植しても腫瘍の増殖速度が変わらず、またGFPの発現をFACSで検討したところ、RAE-1-GFPの発現は極めて弱く、融合蛋白が効率的に発現していないことが強く示唆された。RAE-1はFLAG,GFP共に融合蛋白としては効率よく発現しないことが強く示唆され、戦略の見直しが必要と考えられた。 現在、GFPとRAE-1の間にIRESを組み込んだ発現プラスミッドpIRES-GFP-RAE-1を作成した。IRESにより転写されたRNAからRAE-1とGFPは別個に翻訳され、別個の蛋白として発現されるため融合蛋白のような影響を受けないことが予想される。この発現プラスミッドをC26及びEL-4に導入し、in vivoにおける効果を検討中である。また、マウス腫瘍におけるRAE-1の発現をRT-PCR法で検討したところ、ルイス肺がん細胞、B16メラノーマには発現を認め、大腸癌C26,thymonaEL-4細胞には発現していないことを確認した。
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