研究概要 |
NK細胞膜上に発現する受容体の中でNKG2Dは細胞内にITIMモチーフが欠損している活性型受容体である。NK細胞はNKG2Dリガンドを認識し,殺細胞効果を発揮する。そこで、この系を使った免疫遺伝子治療の可能性を検討すべくマウスモデルで以下の実験を行った。前年度にクローニングしたRAE-1β cDNAをGFPcDNAと融合させ、レトロウイルスを用いた発現系を用いて検討したが、RAE-1-GFPの発現は極めて弱く、融合蛋白が効率的に発現していないことが強く示唆された。 そこで、GFPと融合させずにRAE-1βcDNAをアデノウイルス発現ベクターに組み込み、RAE-1発現アデノウイルス(AdRae-1)を作成し、ウイルスを大量に調整した。RAE-1に対するポリクローナル抗体が他施設で作成されたので、それを入手しAdRae-1ウイルス感染後癌細胞における細胞膜上におけるRAE-1発現をFACSで確認した。次に、in vitroにおいてRAE-1発現癌細胞がNK細胞に対する感受性を得、NK細胞により傷害を受けることを確認した。また、ex vivoでAdRae-1を感染させたB16をマウスの皮下に移植したところ、B16では腫瘍の増殖が37%抑えられた。これらの実験結果は、NK細胞を中心とするInnate Immunityは腫瘍の拒絶や増殖抑制に関わることを示唆しているが、その効果は限定的であった。そこで、NK細胞にも関与するCX3CケモカンであるFractalkineに注目し、アデノウイルスベクター(Ad.FKN)を作製した。C26およびB16皮下移植腫瘍内にAd.FKNを投与したところ強い腫瘍増殖抑制効果を示した。また腫瘍組織を検討したところCD4およびCD8細胞の浸潤が強く認められこれらT細胞による抗腫瘍免疫反応の誘導が抗腫瘍効果の機序と考えられた。
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