研究概要 |
平成14年度は、気管支喘息の病態における気道細胞の修復因子の意義について検討するために、すでに研究計画に申請したマウス喘息モデルを用いて、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor : HGF)の内因性の発現について解析した。卵白アルブミン(OVA)抗原を用いてマウスを腹腔内感作したのちに、吸入投与し、気道にアレルギー性炎症を惹起した。気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid : BALF)中のHGF濃度は、気道における炎症が進展するとともに上昇した。一方で、肺組織抽出液中の濃度は、抗原の感作とともに徐々に上昇を来し、気道炎症が進行している時点(21日目)にピークに達した後、以後漸減し、気道組織の線維化、リモデリングが形成される時点(28日目)では低値を示した。一方、線維化促進因子であるtransforming growth factor (TGF)-βは21日目より上昇傾向を示し、28日目に最大となった。免疫組織染色ではHGF, TGF-βともに肺胞マクロファージ、好酸球の細胞質に陽性が認められた。以上の結果より、気道が線維化を来す時期には、線維化促進因子(TGF-β)と抗線維化因子(HGF)とのバランスが線維化の側に傾いている可能性が示唆された。従って、この時期に抗線維化因子(HGF)の発現を高めれば、気道のリモデリングを抑制できる可能性が示唆された。
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