研究概要 |
1.ヒト肺癌細胞株を用い,エネルギー依存性排出ポンプの1つであるP糖蛋白(P-gp : P-glycoprotein)の機能に対する14員環マクロライド系抗生物質クラリスロマイシン(CAM : clarithromycin)の効果を検討した。2.方法:P-gpに対する特異的基質であるrhodamine 123を用い,フローサイトメーターにてP-gpを介する排出機能を解析した。対数増殖期にあるヒト肺癌細胞株をrhodamine 123で90分間処理し,引き続きrhodamine 123(-)のメディウムでさらに30分間培養した後,細胞内のrhodamine 123の蛍光強度を530nmのフィルターを用いフローサイトメーターで測定した。CAMのP-gp機能に対する効果は,細胞株をCAM(5-50μg/ml)で72時間前処理の後,上記方法にしたがい検討した。P-gp機能抑制のpositive controlとしてcyclosporin A(100-1000nM)を用いた。3.結果:(1)p53がwild typeであるヒト肺癌細胞株(A549, RERF-LC-MS, EBC-1)に対して, CAMは濃度依存的にP-gp機能を抑制した。(2)p53を欠失しているヒト肺癌細胞株(H358, H1299)に対して,CAMはP-gp機能を抑制できなかった。(3)CAMのP-gp機能抑制に対するP53 statusの影響を検討するため,wild type p53のRERF-LC-MS細胞にdominant negative p53発現プラスミッド,あるいは,コントロールプラスミッドをtransfectionした後,CAMのP-gp機能に対する効果を解析した。dominant negative p53にてp53機能を抑制しても,CAMのP-gp抑制機能は解除されなかった。
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