研究概要 |
平成14年度の研究では,14員環マクロライド系抗生物質(CAM: clarithromycin)の多剤耐性蛋白(MRP-1: multidrug associated protein-1)発現および機能に対する影響をヒト肺癌細胞株(A549,GLC4)を用いて行った。(1)CAMはdoxorubicinのA549細胞に対する細胞障害性をMRP-1の作用を抑制することにより増強した。(2)pro-oxidantsであるtBHQや過酸化水素は濃度依存性にA549細胞のMRP-1発現を増強したが,その発現増強はCAMの前投与により有意に低下した。(3)pro-oxidantsは濃度依存性にc-Jun N-terminal kinases(JNKs)を活性化したが,その活性化はCAMの前投与により有意に低下した。(4)doxorubicinはGLC4細胞に対して時間依存性にMRP-1蛋白の発現を増強したが,その発現増強はCAMの前投与によって有意に低下した。以上より,doxorubicinをはじめとする抗腫瘍薬は,そのpro-oxidant作用によるJNKsの活性化を介して腫瘍細胞のMRP-1発現を増強させ,多剤耐性の形質を誘導するものと考えられた。そして,CAMに代表される14員環マクロライド系抗生物質はJNKs活性の抑制作用を通じて抗腫瘍薬のMRP-1発現増強による多剤耐性誘導を抑制している可能性が考えられた。
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