研究概要 |
1.びまん性汎細気管支炎(DPB)の肺組織におけるアポトーシスの検討:外科的肺生検で得られた組織を抗Fas, Fas ligand抗体で免疫染色を行った。呼吸細気管支領域に集積しているリンパ球はFas, Fas ligandを全く発現していなかった。また、アポトーシスの確認のため、肺組織をTUNEL法にて染色したところ、リンパ球には陽性所見を認めず、リンパ球のアポトーシスは完全に抑制されていた。このことから、DPBの呼吸細気管支領域に集積しているリンパ球はFas-Fas ligand系を介するアポトーシスをおこしていないと考えられ、このことがDPBの慢性炎症に関与していると考えられた。現在、BaxやBcl-2などの細胞内アポトーシス関連蛋白を検討中である。 2.マクロライドによるリンパ球アポトーシスの誘導(in vitroでの検討):健常成人より分離した末梢血リンパ球をクラリスロマイシンやアジスロマイシンのマクロライド系抗菌薬で24〜48時間培養し、アポトーシスの誘導をFas, Fas ligandの発現およびanexin Vを用いたflowcytometryにて検討した。無刺激のリンパ球は薬剤濃度が200mg/lの高濃度でアポトーシスが誘導された.一方、CD3とCD28に対する抗体で刺激されたリンパ球は50〜100mg/lの濃度においてアポトーシスが誘導された。Fasの発現も誘導されたが、薬剤非添加群と変化なく、マクロライドは細胞内シグナルに影響を及ぼしている可能性が示唆された。 3.緑膿菌性慢性気道感染症マウスモデルの検討:マウスモデルの肺組織を経時的に採取し、TUNEL法にて染色した。細気管支領域に浸潤したリンパ球は緑膿菌感染初期にはTUNELに陽性となり、アポトーシスが誘導されていたが、60〜100日にかけてTUNEL陽性細胞は減少し、アポトーシスが抑制されていた。これはヒトのDPBと同様の結果であり、リンパ球のアポトーシスの抑制と慢性気道感染症の成立とは重要な関連性があることが示唆された。
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