研究概要 |
1.びまん性汎細気管支炎(DPB)の肺組織におけるアポトーシスの検討:外科的肺生検で得られた組織を抗Bax, Bcl-2,caspase3抗体で免疫染色を行った。呼吸細気管支領域に集積しているリンパ球はBaxをほとんど発現していなかったが、Bcl-2はほとんどのリンパ球が陽性に染色された。また、アポトーシス実行酵素であるcaspaseもほとんど発現しておらず、DPBにおけるリンパ球アポトーシスの抑制の細胞内分子としてBcl-2の過剰発現が重要であることが判明した。 2.マクロライドによるリンパ球アポトーシスの誘導(in vitroでの検討):健常成人より分離した末梢血リンパ球のマクロライド系抗菌薬によるアポトーシスの誘導をBax, Bcl-2およびcaspase3を用いたflowcytometlyにて細胞内分子レベルで検討した。CD3とCD28に対する抗体で刺激されたリンパ球はマクロライド系抗菌薬50〜100mg/lの濃度においてアポトーシスが誘導され、その誘導はBcl-2発現抑制に関連している結果が得られた。マクロライドは細胞内シグナル、特にアポトーシス抑制蛋白に影響を及ぼしている可能性が示唆された。 3.緑膿菌性慢性気道感染症マウスモデルの検討:マクロライド抗菌薬投与後のマウスモデルの肺組織を経時的に採取し、光顕および電顕レベルにて検討した。慢性気道感染症成立時期の60日目よりマクロライドを投与すると、投与後80日目頃より緑膿菌の菌数の減少が認められ、気道内好中球数の減少とバイオフィルム形成の減少が観察された。このことはin vivoにおいても、マクロライドを長期投与することで緑膿菌の排除とバイオフィルム形成を阻害することが実証された。今後これらの機序としてquorum-sensing機構との関連性を検討していく予定である。
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