研究概要 |
デフェンシンは抗微生物活性を示す塩基性ペプチドである。ヒトではα型とβ型に分類されており、αデフェンシンは主に好中球に存在し、βデフェンシンは従来1型と2型のサブタイプが知られていたが、1型は主に腎、子宮などの泌尿器に、2型は主に皮膚や気道の上皮に存在する。我々は肺結核、肺非定型抗酸菌症、特発性肺線維症(IPF)症例の血漿と気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いて、我々が開発したRIA法により、αデフェンシンを測定した。その結果は健常者と比較して有意に血漿で高値であり、その値は各種呼吸機能検査値や動脈血酸素分圧値と有意に逆相関を認めた。このことから、これらの疾患ではαデフェンシンがその肺障害において何らかの関与をしていることが明らかとなった。また、IPF患者の胸腔鏡下肺生検組織を用いたαデフェンシンの免疫染色では、線維化が強い部分でαデフェンシンの発現がみられており、線維化とαデフェンシンの関連性も示唆された。また、びまん性汎細気管支炎(DPB)症例でその血漿とBALF中のαデフェンシンとβデフェンシン1,2を測定し、αデフェンシンとβデフェンシン2が血漿・BALFともに高値であり、IL-8やIL-1βなどのサイトカイン値とよく相関することを示した。また、合成したαデフェンシン、β1、β2では緑膿菌に対する感受性試験で、β2以外は緑膿菌に対する殺菌作用がみられなかった。このことから、DPBをはじめとする慢性気道感染症ではその気道内のβ2デフェンシンが重要であることが示唆された。またβ2デフェンシンの免疫染色では健常肺では主に肺胞II型細胞で発現がみられた。しかし、DPB症例では気道上皮細胞に主に活性がみられ、気道炎症においては気道上皮細胞からのβ2デフェンシンの産生が重要であることが明らかとなった。また、気道上皮細胞を用いてin vitroの研究を行っているが、αデフェンシン50μg/mlの濃度での刺激で気道上皮細胞からIL-8、IL-1β、GM-CSFなどのサイトカインのmRNAの発現が亢進することを(Rnase protection assayにて)明らかとしたが、この作用はβ2デフェンシンには認められなかった。現在、サイトカインの産生に対するマクロライド薬の影響を検討中である。
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