目的:ヒトオステオポンチン(OPN)はRGD認識部位を有する燐酸蛋白であり、サイトカイン様作用を有している。近年Th1 cytokine優位な肉芽腫形成性疾患において、重要な役割をはたすことが報告されている。今年度我々は、人において、種々の抗体を用いて、全長型および断片化OPNの測定系を確立した。さらに、結核患者およびサルコイドーシスにおいて血中のOPNを測定しその臨床的意義を検討した。 方法:未治療の結核患者30例(病変の拡がり1. 7例;拡がり2. 14例;拡がり3. 9例、うち粟粒結核4例を含む)、未治療のサルコイドーシス23例と健常者から血漿を分離し、BALは未治療のサルコイドーシス19例、健常者5例に施行し、BAL上清を分離し、抗OPN抗体を使用したELISAによって血中の全長型および断片化OPNを測定した。 結果:全長型と断片化OPNは結核、サルコイドーシスおよび健常者で正の相関を認めた。全長型OPNは健常群(197.6±70.5ng/ml)に比し結核群(拡がり1. 278.8±199.9ng/ml;拡がり2. 553.4±315.4ng/ml;拡がり3. 1202.7±713.3ng/ml)およびサルコイドーシス(534.0±548.8ng/ml)で有意に高値であり、また、結核では病変の拡がりが広いほどより増加していた。サルコイドーシスのBAL中にはトロンビンで切断されたOPN(24.3±18.0ng/ml)が健常者(7.8±5.2ng/ml)に比較し有意に増加していた。また、サルコイドーシスにおいて病変局所の断片化OPNは血中の全長型OPNと有意に相関していた。 結論:結核患者における血中全長型OPNは病変の拡がりと相関しており、その増加の程度は病勢を反映している可能性が示唆された。また、サルコイドーシスでは病変局所でトロンビンにより切断された断片化OPNが増加し、血中では全長型OPNが有意に増加し、それぞれは相関を認めた。
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