研究概要 |
間質性肺疾患には,特発性間質性肺炎(IIP)を初めとする予後不良な疾患群が含まれており,それらに共通する病態は不可逆的な肺線維化形成である。間質性肺傷害を受けた組織がRemodelingへと進むことなくRepairするには,肺胞上皮が速やかに再生する必要がある。最近,Renin-Angiotensin系が肺の線維化を誘導すること,その機序に肺胞II型上皮細胞のアポトーシスが関わること等を示唆する報告がなされた。本研究では,ブレオマイシン気管内投与よる間質性肺傷害ラットモデルを用い,特に,Angiotensin II receptor 1 (AT1)を介する間質性肺傷害と肺線維化の促進機構について明らかにし,さらにAT1 selective antagonist (candesartan)が間質性肺傷害・肺線維化の治療薬として有効かについて検討した。AT1陽性細胞は,非傷害下で肺胞II型上皮細胞,肺胞マクロファージ,血管平滑筋細胞,血管内皮細胞等,細胞非特異的な発現分布を示した。AT1は,傷害早期(day7)では好中球と肺胞マクロファージに,傷害晩期(day21)では間質マクロファージと線維芽細胞に強く発現していた。AT1発現を定量化すると,BAL液沈渣では傷害早期に,肺ホモゲネート画分では傷害晩期に有意な発現増加を認めた。肺ホモゲネート画分のhydroxyprolineは,肺傷害ラットで有意に増加したが,Candesartan投与によって有意に抑制された。BAL液中の好中球と肺胞マクロファージ数増加もまたCandesartan投与によって抑制された。このように,たとえAT1が強発現していたとしても,そのantagonistを投与することによって,間質性肺傷害並びに肺線維化形成を抑制することが可能であることが示され,臨床への応用が期待できる成果が得られた。
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