研究概要 |
クララ細胞10-kDa蛋白質(以下CC10)は細気管支領域の無線毛上皮細胞(クララ細胞)より主に産生分泌される蛋白質で,その遺伝子は第11染色体q12.2-13.1にコードされ,2つのイントロンと3つのエクソンから構成される。CC10は70個のアミノ酸からなり,立体構造では4つのα-helixを有する。CC10はホモダイマーを形成し,3番目と69番目のシステインで逆方向に共有結合し,内部に疎水性のポケットを形成する。この蛋白質は尿中のprotein-1(P-1)およびuteroglobinと同一の分子であることが明らかになっている。CC10分子は炎症細胞の遊走抑制作用など抗炎症作用を有し,炎症細胞からの炎症性サイトカインの産生抑制作用も認められる。さらに,CC10分子には癌細胞の遊走能や細胞外マトリックスへの接着能の低下作用も認められ,抗癌作用を有する蛋白質であり,種々の治療応用が期待される。 今年度は,ヒトCC10遺伝子に対するsingle nucleotide polymorphisms(SNP)を検討した。CC10遺伝子においてG38AのSNPが認められ、健常者88例ではG alleleが69.3%でA alleleが31.7%であったが、サルコイドーシス156例でG alleleが52.6%でA alleleが47.4%であり、サルコイドーシスにおいてA alleleが有意に高率であった。また、サルコイドーシスにおいて5年以上経過を観察した症例ではG38AがAAの場合有意に転帰が不良であった。
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