研究概要 |
クララ細胞10-kDa蛋白質(以下CC10)は細気管支領域の無線毛上皮細胞(クララ細胞)より主に産生分泌される蛋白質で,その遺伝子は第11染色体q12.2-13.1にコードされ,2つのイントロンと3つのエクソンから構成される。CC10は70個のアミノ酸からなり,立体構造では4つの・-helixを有する。CC10はホモダイマーを形成し,3番目と69番目のシステインで逆方向に共有結合し,内部に疎水性のポケットを形成する。この蛋白質は尿中のprotein-1(P-1)およびuteroglobinと同一の分子であることが明らかになっている。CC10分子は炎症細胞の遊走抑制作用など抗炎症作用を有し,炎症細胞からの炎症性サイトカインの産生抑制作用も認められる。さらに,CC10分子には癌細胞の遊走能や細胞外マトリツクスへの接着能の低下作用も認められ,抗癌作用を有する蛋白質であり,種々の治療応用が期待される。 ヒトCC10遺伝子に対するsingle nucleotide polymorphisms(SNP)を検討した。Infomed contentを得た健常者および呼吸器疾患の検討では6箇所のSNPをdirect sequence analysisで同定でき、サルコイドーシスおよび喘息ではG38AにおいてA alleleとA-908GにおいてはG alleleの頻度が有意に高率であった。サルコイドーシスにおいてはG38AのAA genotypeが血中およびBAL中CC10濃度有意に低下しており、AA genotypeが転帰不良症例の集積を認めた。しかし、A-908Gのgenotype間ではCC10濃度に差を認めなく、転帰にも影響はなかった。喘息ではG38AのAA genotypeで且つA-908G GG genotypeの集積があり、今後その意義を検討する予定である。
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