酸化ストレス制御に基づく気管支喘息の新規治療戦略

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670611
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 金澤 博 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (90332957)
• 研究分担者: 平田 一人 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (50173232)
• キーワード: 気管支喘息 / 運動誘発喘息 / 血管新生 / 血管透過性 / 窒素酸化物

研究概要

喘息気道においては過剰な新生血管を背景に、著明な血管透過性亢進が誘導され、運動誘発気道収縮反応が惹起される。この際、喘息の病態生理にとり重要なメディエーターであるヒスタミン・ロイコトリエン・窒素酸化物等が血管透過性亢進を介し、運動誘発気道収縮反応を増強させるというメカニズムを明らかにした。さらに、β2刺激薬・抗ロイコトリエン薬の運動誘発気道収縮反応抑制効果の一部は、血管透過性亢進の抑制を介してその薬理作用を呈することを確認した。また、吸入ステロイド薬は投与初期から血管透過性亢進抑制作用を有すること、長期的には血管新生促進因子の気道内での産生抑制及び、血管新生促進因子と抑制因子の比率を低下させることにより、血管新生を抑制するという可能性も明らかにされた。我々は、既に気道内の窒素酸化物が血管透過性亢進作用を有するのみならず、血管新生促進因子の産生増強作用も併せ持つことを明らかにしている。さらに、我々が考案した内因性の窒素酸化物抑制活性の測定(Thorax 2002)により、両者の比率が血管新生・血管透過性亢進にとり極めて重要であるとの結果を得ている。このことからも、血管新生と血管透過性亢進は喘息の病態において強い関連性をもつ現象であることが示唆され、窒素酸化物の産生抑制・消去が運動誘発気道収縮反応の制御にとり重要な治療戦略であるという事実を提供する。我々は既にプラセボを用いた二重盲検法により喘息気道において、β2刺激薬・抗ロイコトリエン薬・吸入ステロイド薬が血管透過性亢進抑制作用を有している事を明らかにしている。これらの研究成果は、運動誘発喘息に対して、理論に裏付けられた治療戦略の初めてのケースとなるものである。

研究成果

• [文献書誌] Kanazawa H, Shiraishi S, Hirata K, Yoshikawa J: "Decreased peroxynitrite inhibitory activity in induced sputum in patients with bronchial asthma"Thorax. 57. 509-512 (2002)
• [文献書誌] Kanazawa H, Asai K, Hirata K, Yoshikawa J: "Vascular involvement in exercise-induced airway narrowing in patients with bronchial asthma"Chest. 122. 166-170 (2002)
• [文献書誌] Kanazawa H, Hirata K, Yoshikawa J: "Nitrogen oxides reduce albuterol-induced bronchodilation in patients with bronchial asthma"Respiration. 69. 490-495 (2002)
• [文献書誌] Kanazawa H, Hirata K, Yoshikawa J: "Involvement of vascular endothelial growth factor in exercise-induced bronchoconstriction in asthmatic patients"Thorax. 57. 885-888 (2002)
• [文献書誌] Kanazawa H, Shiraishi S, Hirata K, Yoshikawa J: "Imbalance between nitrogen oxides levels and peroxynitrite inhibitory activity in chronic obstructive pulmonary disease"Thorax. 58. 106-109 (2003)
• [文献書誌] Kanazawa H, Mamoto K, Hirata K, Yoshikawa J: "Interferon therapy induces the improvement of lung function by inhaled corticosteroid therapy in asthmatic patients with chronic hepatitis C virus infection"Chest. 123. 600-603 (2003)