我々は、気管支喘息患者に対して、呼気中NO濃度、気道内の炎症細胞浸潤の程度・サイトカイン濃度を測定し、β2受容体刺激薬の効果との関連性を評価した。そこで、気道内の内因性窒素酸化物濃度が高い喘息患者において、β2受容体刺激薬による気管支拡張反応が著明に減弱するという事実を確認した。さらに、種々の薬物、および、抗酸化物質の前投与により、気管支喘息患者に対するβ2受容体刺激薬の作用増強効果が確認できるかどうかを検討した。現在の気管支喘息治療において、広く推奨されている吸入ステロイドの作用の一つに気道内窒素酸化物の生成抑制作用が確認されている。そこで、吸入ステロイドの投与前後において、呼気中・気道内分泌液中NO濃度を定量的に評価し、β2受容体刺激薬の効果増強に及ぼすNO濃度の変化について、その相互関係を明らかにした。第2の研究として、メサコリン等の気管支収縮物質にて強制的に気道収縮を惹起し、次に、β2受容体刺激薬にて得られる気管支拡張効果をステロイド吸入前後で比較した。この際も、NO濃度とβ2受容体刺激薬の効果に強い相関関係が認められた。さらに、気道内分泌液中の窒素酸化物に対する抗酸化能を初めて定量化する方法を開発した。この方法により気管支喘息患者の気道内では窒素酸化物の生成促進と抗酸化能の低下が共存するという事実が明らかにされた。これらの結果は、従来から指摘されていたステロイドのβ2受容体刺激薬の作用増強効果を説明する論理的な根拠を初めて提供したものと思われる。
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