本年度はosteopontin(OPN)の血管新生への関与を明らかにする目的で本年度予定していた研究の予備実験として以下の実験を行った。1)transfectantsの作成 : OPNが発現していない神経芽細胞腫(glioblastoma)C1300にOPN遺伝子を導入した遺伝子移入株C1300-OPNを作成した。また、コントロールとしてvectorのみを移入したC1300neoも作成した。2)In vitro cell proliferation assay : C1300-OPNとC1300neoで細胞増殖速度は同等であった。3)In vitro cell migration assay : C1300-OPNの培養上清はC1300のそれと異なり血管内皮細胞に対する細胞遊走活性を有した。4)mouse dorsal air sac assay : 1x10^7/0.2mlのC1300-OPNあるいはC1300neoをチャンバーに注入し、A/Jマウスの皮下に移植し新生血管の観察を行った。C1300-OPNはC1300neoよりも強い血管新生能を有した。5)cDNA macroarray : DNA tipsを用いてC1300-OPNとC1300neoの遺伝子発現を比較検討すると、OPNの発現は増強するものの血管内皮細胞増殖因子(VEGF : vascular endothelial cell growth factor)などの他の血管新生に関与する遺伝子の発現は増強させなかった。これらの結果は、OPNはVEGFなどの他の血管新生を惹起する遺伝子とはindependentに血管内皮細胞の遊走を増強することで血管新生を誘導することを示唆する。現在、in vitroで得られたこれらの結果を、in vivoで証明するため、ヌードマウスの皮下にこれらtransfectantsを移植し、造腫瘍能を比較検討している。
|