研究概要 |
EDはOPNと受容体を共有する内因性血管新生阻害因子であり、多くの腫瘍において血管新生阻害作用をin vitro, in vivoで示すことが報告されてきた。しかしながら、現在までに行われた臨床第一相試験の結果は、EDの臨床的に有効であった症例は26症例中2症例と散々たる成績で、特に肺がんに対する有効性は確立されているとはいえない。そこで今回我々はEDの肺癌における有用性をin vitroおよびin vitroで検討した。1)マウス肺癌細胞株LLCにマウスED遺伝子を導入したtransfectant(LLC/ED)を樹立した。2)結果は予想に反して、EDの遺伝子導入は血管新生を誘導することで造腫瘍能を亢進させた。3)血管新生を亢進した機序はED導入で、マウス肺癌細胞LLCからのVEGFの産生が亢進したためと考えられた。4)LLC/EDの培養上清はLLCneoに比較してHUVECに対する強い増殖活性を誘導した。本結果は肺癌におけるEDの臨床応用を考えた場合きわめて意味をあるものと思われる。つまり、EDの遺伝子導入は癌腫(あるいは細胞)によってはVEGFなとの血管新生を亢進させる他の増殖因子の発現を亢進させ、結果的に血管新生を亢進させてしまうこともあり、その投与においては十分な注意が必要と思われた。また、本結果は肺癌においてEDが有用でなかった結果を説明し得るものかもしれない。
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