研究概要 |
平成11〜12年度の研究によりHCVenvの強発現のみでwild typeよりわずかに肺の線維化傾向を示し,さらに線維化の促進物質であるシリカをHCVenvマウスに経気道的に投与すると無処置のwild typeやHCVenvマウスのみならずwild typeマウスにシリカを投与した場合と比較しても著明に線維化が惹起されることを発見した。平成13年ではHCVenvにおける肺の炎症・線維化について、長期にBALF、肺組織の病理とハイドロキシプロリン量を用いて検討し,3ヶ月の時点で炎症細胞浸潤が増加し,6ヶ月の時点で線維化が経時的に増強することを認めた。さら肝臓など他臓器でも線維化が亢進している可能性が示唆されたので,その現象をとらえるとともにそのメカニズムについて平成14年度に検討した。まず肝臓や間質性肺炎では線維化には線維化においてアポトーシスの促進が実験的に報告されている。しかし我々の検討ではmRNAレベルでFAS, Bax, Caspase-8の基質であるBIDのすべてがHCVenvで低下しており,他の実験系と異なりアポトーシスは抑制されていることが示された。さらに興味あることに転写因子であるCREB-2,STAT-1などもHCVehvで抑制されることが示され,今回認められた肺の病変は,線維化の抑制因子の障害による可能性が示唆された。その一つの候補としてHGFがHCVでは低下していることが認められた。またサイトカインレベルの検討ではwild typeでは線維化促進であるTGF-βやiGF-1がシリカにより上昇するが,HCVenvではシリカによるそれら因子の変化を認めない一方でIGFBPの一部に低下を認めたことより,結果としてIGF作用が亢進する可能性が示された。その他にMIP-3α,HSPやcathepsinさらにCD14,CD64に関してはHCVenvにおいて促進が認められた。後者の線維化に対する作用につき検討が必要である。
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