咳嗽は不快な気道反射と考えられ研究の関心は鎮咳剤の開発に向けられてきたが、本研究では、誤嚥性肺炎など咳嗽反射の鈍化が役割を果たす疾患にも興味もち、咳嗽の機序をさらに検討し、咳噺を増強する方法を動物実験により求めた。平成13年度は、筋弛緩剤投与により体動による測定の干渉を除いたイヌの気管分岐部を刺激して誘発した咳嗽では気管のほかに気管支の径の狭窄を観察した。次に、陰圧を急激に負荷した咳嗽シュミレーションを行い、この気管支狭窄が咳嗽時に高速な気流が通過する領域を比較的太い径の気道に集中させて、異物除去の機能を促進することが推測した。 平成14年度の観察事項は、誘発された咳嗽の強度が声帯刺激と気管刺激で差が認められなかったが、声帯と気管を同時に刺激では有意に強い咳嗽が出現し、声帯刺激と気管刺激は相互に増強作用があると考えられた。ついで、CO_2吸入、アミノフィリン静注、ジモルフォラミン静注によって呼吸刺激をすると分時換気量は増強傾向が得られたが、アミノフィリン静注では換気が抑制されるイヌも少数ながら存在したことや、ジモルフォラミン静注では一回換気量増加よりも呼吸数の増加が顕著であったことなど、投与薬剤によって作用点が若干異なることが推測された。いずれの薬剤投与によっても、咳嗽の強度は増強傾向が得られたが、最終的な解析はまだ終了していない。
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