研究概要 |
CFTRは常染色体劣性遺伝性疾患である嚢胞性線維症(cystic fibrosis, CF)の病因分子であり,CFTR遺伝子の変異に基づく同蛋白の量的ないし質的異常がCFを引き起こす.しかしながら,CFTRが典型的CF症例の病因のみならず,さまざまな疾患の成因や修飾因子として重要な役割を果たしていることが近年の研究から次々に明らかにされている.我が国のCF例でのCFTR遺伝子変異スペクトラムが欧米人のそれらと大きく様相が異なることをこれまでの我々の研究から明らかにしてきたが,本研究はさらにこれらの知見を発展させ,我が国の患者に見いだされるCFTR変異の蛋白レベルでの機能障害機構をより明確にし,さらにマクロライド(MA)薬の気道炎症患者に対する有効性に関して,その制御機構をCFに類似する呼吸器病変を呈するびまん性汎細気管支炎(DPB)に潜在的に関わるCFTR蛋白の機能的側面から解明するものである. 平成13年度は,まず上皮細胞におけるCFTR遺伝子の発現量,splicing,蛋白翻訳とMAのそれらへの作用を検討し,MAがCFTR発現レベルには明らかな変化をもたらさないものの,exon 9のsplicingを微増させることを見いだした.さらにチャネル機能へのMAの修飾作用に関して野生型のCFTRとCFTRΔF508で恒久的に形質転換された極性を有する細胞株LLCPK,LLCPKΔF508を用いてエリスロマイシンなどのMA刺激の影響を検討し,MAが軽度ながらもCFTRチャネルの活性化ももたらしうる可能性を見いだした. ついで,わが国のCFやDPB,先天性両側精管欠損症(CBAVD)において複数の患者に共通に見いだされるCFTR遺伝子多型125C,およびCFTRミスセンス変異Q1352Hについて,RSV-LTR promoterで駆動されるCFTR発現プラスミドベクターpRSV-CFTRをもとにin vitro mutagenesisの手法を用いて作成した.これらをLLCPK細胞に導入後,恒久的発現細胞株を樹立し,それぞれの機能的欠陥の確認と,さらにCFTR機能に対するMA剤の作用を解析する.
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