研究概要 |
我々は、肺癌の転移に関わる重要な因子を把握するためには、この転移を全体的に捉える様な戦略を採ることが必要と考え、まず、ヒト肺癌の高転移株を樹立し、その後、この高転移株と親株とを全体的に比較することにより、肺癌の転移に関わる因子を総合的に捉え、新たな未知の因子の単離を行うことを計画した。ヌードマウスへの人工的転移の系を用いて、ヒト肺癌細胞株の高転移株を樹立し親株とこれらの複数の高転移株について、マクロアレイを用い発現プロファイルを比較検討した。これらの解析により、高転移能の獲得は、単一因子の発現変化ではなく、同時に、多数の特定機能を有する因子の発現が変化する事を明らかにし、その成果を論文掲載した(European Journal of Cancer, 37:1554-, 2001.)。その後、機能が未だ明確でない遺伝子について、肺癌における不活化の状況を検討し、新たな肺癌抑制遺伝子と考えられる遺伝子を得、現在、この遺伝子の研究を継続している。また、約1万の遺伝子を解析するマイクロアレイを用いた発現プロファイル解析を行い、未知の遺伝子単離を試みた。その結果得られた5個のEST cloneの一つがGalectin 3であり、肺癌細胞における発現解析を行った結果、非小細胞癌の1/3で過剰発現していることが明らかになった。今後、この遺伝子の発現状態と遠隔転移再発との関係を検討し、臨床への応用を考慮する予定である。
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