環境曝露物質による肺リモデリングにおけるクララ細胞の役割

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670623
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
• キーワード: クララ細胞 / CCSP / シリカ / 泡沫化マクロファージ / CGRP

研究概要

クララ細胞がシリカによる肺傷害にどのような役割を果たすか検討するために、ナフタレン300mg/kgを腹腔内注入して作成したクララ細胞除去マウス及びWild typeマウスに結晶質シリカを吸入曝露(Min-U-Sil,シリカ平均重量濃度97.1±9.5mg/m3,6時間連続曝露、最大2週間吸入曝露)を行い、1日、3日、1週間、2週間後に解剖した。著明な大型マクロファージの浸潤(貪食やサイトカインの産生亢進)を認め、免疫染色を行い泡沫化の確認を行った。サーファクタントプロテインAによる染色で、これらの細胞が陽性細胞となったことより、クララ細胞は、シリカによる肺傷害において、マクロファージの泡沫化を抑制することが示唆された。また、結晶質シリカや石綿を曝露した動物モデル(気管内注入後、6ヶ月まで観察)を作成し、CCSPの発現を検討した。急性期も慢性期も持続的に発現が低下したことは、粉じんによる肺障害には、末梢気道上皮細胞における炎症抑制作用の低下が関与することが考えられた。
クララ細胞が産生する上皮細胞の増殖因子のひとつであるCGRPが肺障害の修復に関与するか検討した。In vitroにおいてCGRPが肺胞上皮細胞増殖にERKを介して行われること、in vivoにおいては、CGRPを強制発現させた動物モデルにおいて、肺胞、気道上皮細胞の過形成が認められたことは、CGRPが上皮修復に関与することが示唆された。また、ブレオマイシン曝露モデルにおいてCGRP発現が低下したことは、肺障害において、CGRPの発現低下による修復機転が不充分であることが関与すると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Morimoto, Y: "Gene Expression of Surfactant Protein-A and Thyroid Transcription Factor-1 in Lungs of Rats Exposed to Silicon-Carbide Whisker in vivo."J Occupational Health. 45. 307-312 (2003)
• [文献書誌] Morirmoto, Y: "Expression of Clara Cell Secretory Protein in the Lungs of Rats Exposed to Silicon-carbide whisker in vivo"Toxicology letter. 145(3). 273-279 (2003)
• [文献書誌] Matsuoka, M: "Phosphorylation of p53 Protein in A549 Human Pulmonary pithelial Cells Exposed to Asbestos Fibers"Environmental Health Perspectives. 111(4). 509-512 (2003)
• [文献書誌] Morimoto, Y: "Epithelial cells-Modifiers of lung injury"Journal of UOEH. 25(sup). 259-267 (2003)
• [文献書誌] Akiyama, I.: "Clearance of Deposited silicon Carbide Whisker from Rat Lungs Inhaled during a 4-Week Exposure"Journal of occupational Health. 45(1). 31-35 (2003)
• [文献書誌] 森本 泰夫: "ロックウールの人体に対する影響と作業環境の管理"日本医事新報. 4114. 116-117 (2003)
• [文献書誌] 小畑 泰子, 小畑 英登, 森本 泰夫: "シュミレーション内科呼吸器疾患を探る-腫瘍編-"永井書店. 422 (2003)