研究課題/領域番号 |
13670625
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
樋田 豊明 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (80250249)
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研究分担者 |
高橋 隆 愛知県がんセンター, 分子腫瘍学部, 部長 (50231395)
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キーワード | cyclooxygenase2 / 肺癌 / アラキドン酸 / COX-2阻害剤 / 抗癌剤 / 増殖抑制 / EGFR阻害剤 / 臨床応用 |
研究概要 |
難治癌の代表であり、且つ増加傾向にある肺癌の治療成績向上を目指した新しいアプローチとして、アラキドン酸代謝のシグナル伝達経路の触媒酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2の選択的阻害剤の肺癌治療への応用を目的に基礎的検討を行なった。 種々の癌細胞のCOX-2蛋白発現量をELISA法を用いて測定した結果、肺癌では腺癌、大細胞癌で高い値を示し、COX-2高発現による病態への関与が示唆されている大腸癌や乳癌に比べても高い値を示した。種々のCOX-2選択的阻害剤を用いて癌細胞に対する増殖抑制効果について細胞株のpanelを用いて検討した結果、COX-2選択的阻害剤は濃度依存的に癌細胞の増殖を抑制し、増殖抑制効果は、臨床的に到達可能濃度において観察された。検討に用いた種々のCOX-2選択的阻害剤の間で効果に差が認められたが、増殖抑制効果は大腸癌に比べて肺癌で高く、肺癌に対する臨床応用の有用性が期待された。COX-2選択的阻害剤の作用点は、副作用の多い抗癌剤とは異なり、正常細胞に比して癌細胞で高発現しているCOX-2を分子標的としており、今後急増が予想される高齢者肺癌の治療におけるクオリティーオブライフを念頭においた治療、従来の抗癌剤との併用療法、術後adjuvant療法等、肺癌の治療への応用が期待され、臨床応用の第一歩として、化学療法再発症例に対してプロトコールを作成し、臨床試験の準備を進めている。一方、リポキシゲナーゼの選択的阻害剤及び上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤による肺癌の増殖抑制効果を観察しており、また、EGFによりCOX-2の発現の増強がもたらされることも観察している。これらの結果は、シグナル伝達阻害剤の併用により、難治性癌の代表である肺癌に対して、副作用の軽微で且つ有効な新しい治療法の開発が可能であることを示唆しており検討を続けている。
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