研究概要 |
アルツハイマー病(AD)患者のMRI画像において、ラクナー梗塞などの脳血管障害はしばしば遭遇する所見である。しかし高血圧などの血管性危険因子が直接ADの病態形成に係わっているのか、或いは血管障害を介して間接的にADの病態を修飾しているのかは明らかではない。今回、MRIを用い無症候性脳梗塞(SBI)の検出とその危険因子について検討した。「結果と考察」DSM-IVの診断基準を満たした141名のAD患者を139名の年齢と性をマッチさせた地域在住高齢者と比較した。141名のADの中で、47名(33%)にSBIが認められた。SBIを伴うADでは、SBIのないADに比して有意に年齢が高く、血漿ホモシステイン値が高値であった。年齢を補正した多変量解析では、血漿ホモシステイン値>11.4,umol/Lでは、SBIを有するodds ratioは4.2倍(95% C.1:1.7-10.5,P=0.002)に増加していた。しかし、ApoE4遺伝子、高血圧、高コレステロール血症、喫煙習慣などのvascular risk factorsは有意な危険因子ではなかった。血漿ホモシステイン値は、葉酸値と有意な逆相関を認めた。また、血漿ホモシステインは、AD発症年齢、MMSEによる認知機能、脳脊髄液タウ値、脳脊髄液アミロイド値とは相関しなかった。「結語」ADに伴うSBIは高ホモシステイン血症を危険因子としたユニークな血管障害と考えられたが、ADの直接的な危険因子とは考えにくい結果であった。血漿ホモシステイン低下療法が、ADにおける血管障害を予防する上で新しい治療戦略となる可能性が示唆された。
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