【背景】筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄、脳幹および大脳の運動神経細胞が選択的に障害される神経変性疾患である。一部の症例においてはCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が明らかにされている。病理学的にALSの脊髄前角細胞の軸索近位部に認められる腫大軸索は初期病変として重要とされているが、私たちはこの腫大軸索にgalectin-1が蓄積し、脊髄前角細胞の変性過程に関与していることを報告した。galectin-1は末梢神経の再生作用を有することが報告されているが、galectin-1がALS脊髄前角において神経保護作用を有するか否かを、モデル動物である変異SOD1トランスジェニックマウス(mSOD1 Tg mice)を用い検討した。【方法】mSOD1 Tg miceの左側腓腹筋にgalectin-1を筋肉内投与し、運動障害の発症時期、生存期間、罹病期間、運動機能を検討した。また脊髄前角の残存大型神経細胞数を病理学的に評価した。galectin-1は投与量により高容量(0.25μg/body weight(g))、低容量(0.025μg/body weight(g))、及び生理食塩水投与の3群を設け、生後10週から投与を開始し、7日おきに投与を継続した。また、運動機能はRotarod(室町工業)を用い、7日ごとに評価した。また前角細胞数の病理学的検討は生後21週のマウスを還流固定し、各群を比較検討した。【結果】生存期間および罹病期間の生存解析において、高容量群が生理食塩水投与群に比し、有意に延長を示した。運動機能については高容量群が生理食塩水投与群に比し有意に保たれていた(p<0.05)。また、腰髄前角の大型神経細胞数は生理食塩水投与群に比し、高容量群において有意に保たれていた(p<0.05>。【結語】高容量のgalectin-1投与により、H46R SOD1 Tg miceの生存期間、罹病期間、運動機能および脊髄前角の大型神経細胞数は有意に改善した。Galectin-1はH46R SOD1 Tg miceに対し神経保護作用を有し、その有効性が示唆された。
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