研究概要 |
Stiff-man症候群の神経免疫学的検討 目的 Stiff-man syndrome(SMS)はGABA作動性抑制介在ニューロンの機能障害によっておこるとされ,自己免疫疾患と考えられている.臨床的にSMSと診断した患者9例について申請したwestern blot用試薬を用い,自己抗体の有無を検討した. 方法 対象は臨床的にSMSと診断された患者9例(男女比5:4,平均年齢53.6歳).最初にラット脳ホモジネートを用いて患者血清または髄液でwestern blotを行った.次にラット脳ホモジネートと患者血清または髄液を用いて免疫沈降を行い,抗GAD抗体,抗amphiphysin抗体,抗gephyrin抗体を用いてwestern blotを行った. 結果 自己抗体陽性例は9例中4例で,その内訳は抗GAD抗体1例,抗gephyrin抗体1例,抗amphiphysin抗体2例であった.抗gephyrin抗体陽性例では縦隔腫瘍を合併しており,抗amphiphysin抗体陽性の患者1例には2年後に乳癌が発症した.抗amphiphysin抗体陽性例のうち,乳癌を後に発症した症例では通常のwestern blot,免疫沈降法とも抗体が容易に検出されたが,腫瘍を伴わない症例では通常のwestern blotでは抗体は検出されず,免疫沈降法ではじめて抗体が検出可能となった. 考察 (1)免疫沈降法は通常のwestern blotでは検出不能であった自己抗体を検出でき,SPSの自己抗体検索において有用であると考えられた. (2)抗GAD抗体陽性のSPSは今回の検索では1例のみであり,現在報告されているより陽性率が少ない可能性があるが,今後症例の蓄積が必要である. (3)抗体陰性例には未知の自己抗体が存在する可能性が有り,さらなる検討が重要である.(772字)
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