研究概要 |
孤発性筋萎縮性側索硬化症(SALS)には疾患感受性遺伝子が存在し,発症に関与している可能性があり,これを明らかにできれば,SALSの発症メカニズムの解明や治療法の開発に重要な知見となると考えられる. 今年度は疾患感受性遺伝子の存在するゲノム領域を探る目的で研究を遂行した.まず,ヒトのゲノム遺伝子を扱うことから,倫理面への配慮として,新潟大学遺伝子倫理審査委員会に研究計画を提出し,承認を得た.次いで,本邦のSALS患者及び対照群のゲノムDNAの収集に努めたが,その際には本研究の目的や方法などについて口頭および文書により十分な説明を行い,文書により同意を得て行った.現在までにSALS84例(男性50名,女性34名,平均年齢58.6±10.4歳),対照95例(男性52名,女性43名,平均年齢70.8±7.4歳)のゲノムDNAを入手した.対照群は正常者およびALS以外の疾患患者(高血圧,糖尿病,緊張型頭痛,脳梗塞,頚椎症,末梢神経障害などで,神経変性疾患は含まれていない)で60歳以上の者とした.これを用いて,全ゲノム領域を対象とした関連解析をはじめて行った.方法は,当初,lSNPsを用いた解析を計画したが,まずはマイクロサテライトマーカーを用いる方が有利と判断し,ヒト染色体全体を4.6cM間隔でカバーするマイクロサテライトマーカー(811種類)を用いた.SALS群(84名)と対照群(95名)間のマイクロサテライト多型のパターンの違いを統計解析(χ^2検定,2×n Table)した.その結果,第18染色体の1カ所,X染色体の2カ所において多型パターンが両群で異なっていることを見出し,この領域にSALSの疾患感受性遺伝子が存在する可能性があると考えられた.次年度はSNPsを用いてさらに詳細なマッピングを行い,疾患惑受性遺伝子の存在領域を絞り込み,クローニングを行う予定である.
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