重症筋無力症患者(MG)の胸腺細胞、骨髄細胞、末梢血単核球(PBMC)の抗アセチルコリン受容体抗体(AChRAb)産生能とIgG産生能を評価した。未治療の患者20名(男性6名、女性14名)について、骨髄穿刺により骨髄液を採取し、また静脈採血により末梢血を得た。Histopaque処理により単核球を分離して、CO_2インキュベーター内で培養した。胸腺摘出術の際、胸腺組織を得、金属メッシュを通して機械的に処理した後、同様にHistopaque処理にて単核球を得、培養した。培養1週間後に、培養液を採取し、免疫沈降法にAChRAb価を測定するとともに、ELISAによりIgGを測定した。その結果、胸腺細胞、骨髄細胞、PBMCの中で、PBMCが最も効率良くAChRAb、IgGを産生していることがわかった。また、MGのPBMCは、正常対照に比べて有意に高いIgG産生能を示し、抗体産生が亢進した状態にあることがわかった。PBMCのAChRAb産生脳、IgG産生能を胸腺摘出術前、術後3ヶ月以内、9ヶ月以上経過した時点で評価してみると、抗体産生能は術後3ヶ月では変化がなく、9ヶ月以上たって減少してくることがわかった。その中で、有意に低下していたのはAChRAb産生能であった。これを指標に、症状増悪の前後で見てみると、血清のAChRAb価が変化がない時点でも、PBMCのAChRAb価の産生能は大きく変化していることがわかった。以上より、重症筋無力症の免疫異常の場とされる胸腺は、自己抗体産生の場としては、その役割はあまり大きなものではなく、文化・活性化した抗体産生細胞は末梢血中に多く見られることがわかった。PBMCのAChRAb産生能、IgG産生能の評価は、重症筋無力症の自己免疫活動の評価、治療効果の判定に有効であることがわかった。
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