研究概要 |
重症筋無力症(MG)の胸腺細胞、骨髄細胞、末梢血単核球(PBMC)の抗アセチルコリン受容体抗体(AChRAb)産生能とIgG産生能を評価した。MG患者のPBMCは正常人のものに比べて高いIgG産生能を持っていることがわかった。また、MG患者のリンパ組織の中で、PBMCが胸腺細胞、骨髄細胞に比べて最も高いAChRAb、IgG産生能を持つことがわかった。Severe combined immunodeficiency (SCID) mouseは、機能を持ったT cellおよびB cellを持たないため、ヒト・リンパ球を注入することにより、ヒト免疫系を再構築することができる。MG患者リンパ球(胸腺細胞、PBMC)をSCID mouse腹腔内に注入し、100日程度経過した後でアセチルコリン受容体抗原を腹腔内注入することで、マウスの血清ヒトAChRAb価が上昇することを証明し、memory immune responseがおこることを証明した。また、MG患者PBMのサイトカイン産生を測定することにより、interleukin (IL)-5,IL-6がIgG産生を誘導することがわかった。以上より、T cellを標的とした免疫抑制薬タクロリムスのMGに対する有効性が期待された。臨床試験の結果、その有効性が証明され、現在、タクロリムスは難治性MGに対する治療薬として臨床で使われるようになった。タクロリムスは、これまでの免疫抑制薬に比べて効果が早く出ることがその特徴で、免疫系を介さない作用もあるものと予想された。培養骨格筋細胞の細胞内カルシウム濃度[Ca^<2+>]_iを測定することにより、タクロリムスはアセチルコリン添加によりひきおこされる[Ca^<2+>]_iを増強させることがわかり、骨格筋の興奮収縮連関に直接的に働くことが示唆された。
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