神経疾患での病態把握、病因解明のために不可欠ではあるが、侵襲的である神経病理学的検査の代用となるMRを用いた高分解能イメージング(MR microscopy)による生体内での神経細胞や軸索などの変性・脱落を検出することが本研究の目的であった。原理的には、現在のMR装置を用いて10μmの単位での観察が可能である。 まず、ニューロパチー症例についての生検顕微鏡的病理像と巨視的なMRI画像との比較を行った。この研究により病理像、特にオニオンバルブの形成あるいは脱髄の存在とMRI画像との間に相関が存在することが予想された。 次に、1.5Tesla MRI装置を用いて、高分解能イメージングを試みたが、数10μm以下の構築物では、その周囲の血流(microcirculation)内に存在する赤血球の酸化還元反応に伴う磁場不安定性の影響があることが判った。このため、中枢神経内での鉄など磁場変化をもたらす金属の分布を計測する撮像法の研究を行い、成果を得たため現在投稿中である。また、神経細胞の活動を観察することにより機能的に解剖学的な構築物の位置を定めることを目的として、fMRIの手法を組み合わせて、脊髄あるいは神経根レベルでの非侵襲的な神経病理学的検討を行っている。この方法により通常のMRI画像では描出がしにくい、視路の一部である外側膝状体を高精度で描出することに成功した。従って、当初の目的である、10μmの単位での観察を行い得る高分解能イメージングそのものについては未完成であるが、将来的には成功するための基礎固めを行えたと考えている。
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