研究概要 |
重症筋無力症(以下MG)は比較的解明のすすんだ自己免疫疾患であるが,その発症メカニズムは依然不明のままである.MGでは過形成胸腺に出現する胚中心においてCD23が過剰発現していることをすでに我々は報告しており,これがアポトーシスを抑制していると考察しているが,このCD23は同時にアレルギー性疾患とも深く関連している分子である. 今回の研究においてMGのなかでも,非胸腺腫群では対照群に比較してアレルギー疾患の罹患頻度が有意に高率であることが明らかとなった.一方,胸腺腫群ではむしろアレルギー性疾患の罹患頻度は対照群よりも低かった.また,アレルギー性疾患を有するMGの方が,臨床症状が軽度であることが観察された.MGにおいて,胸腺腫群と非胸腺腫群とはその発症の背景が異なっていることが今回初めて示唆された. MG患者の胸腺摘出術には,胸骨正中切開法と内視鏡的胸腺摘出術とがあり,後者は手術侵襲が少ないことから現在注目されつつある治療法である.内視鏡的胸腺摘出術のうち縦隔鏡下胸腺摘出術の治療効果に関する免疫学的裏付けはこれまでのところ全くなかった.今回,縦隔鏡下胸腺摘出術の前後において,末梢血CD4陽性T細胞内サイトカイン(IL-4,IFNγ)をフローサイトメトリー法にて測定し,IFNγ/IL-4比を算出した.その結果,術後にIFNγ/IL-4比が上昇する傾向にあることが確認された.このことは,臨床症状が改善するとともにTh1/Th2バランスの変化が平行して起きること,縦隔鏡下胸腺摘出術によりCD4陽性T細胞サイトカインはTh1の方向へシフトする傾向にあることが示唆された.アレルギー疾患はTh2 diseaseといわれており,サイトカインのシフトとMGの症状改善が平行することは大変興味深い.また,縦隔鏡下胸腺摘出術の治療効果が初めて免疫学的に証明された. アレルギー疾患と免疫学的神経疾患との関連は大変興味深くThサイトカインとの関連でさまざまな報告がなされてきている.今後,MG過形成胸腺における胚中心のリンパ球の機能をさらに詳細に検討することによって,この点を明らかにしていきたい.
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