研究概要 |
我々は、Lambert-Eaton筋無力症候群(Lambert Eaton myasthenic syndrome, LEMS)における電位依存性カルシウムチャネル(P/Q-typc voltage-gated calcium channel, P/Q-VGCC)自己抗体の研究の過程で、LEMSの一部に傍腫瘍性小脳変性症(Paraneoplastic cerebellar degeneration、PCD)を合併する一群(LEMS-PCD)があることに注目した。我々の報告では、LEMSの約10%にPCDを合併していた。そのLEMS-PCDの特徴は、全例が血清P/Q-VGCC抗体陽性で、かつ、肺小細胞癌(SCLC)を合併しており、LEMS単独より、自己免疫性かり傍腫瘍性機序の関与が強い疾患と推察される.本研究では、LEMSに合併するPCDの発症機序に焦点を絞り、「カルシウムチャネルがPCD発症の標的抗原となりうる」という作業仮説を立て、LEMS-PCD剖検小脳のP/Q型VGCC量の検討を行った.その結果,1) 小脳P/Q-VGCCの定量:LEMS-PCD患者3例のBmaxは(患者1;64.7fmol/mg, 患者2;70.5fmol/mg, 患者3;53.7fmol/mg),6例のコントロール(平均±SD;297.8±38.9fmol/mg, n=6)と比較し,有意に減少(P<0.01)していた.一方,Kd値は,患者とコントロール間で差は認められなかった. 2)オートラジオグラフィー法による解析:コントロール小脳と比較し,LEMS-PCD症例では,小脳分子層で1251-ω-conotoxin MVIIC結合量が減少していた. 今回の一連の結果から,LEMSを合併するPCDの発症機序においては,LEMSと同様に,Caチャネルを標的とする自己免疫反応がその病態に関与している可能性が示唆された.
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