研究課題/領域番号 |
13670654
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
本村 政勝 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (70244093)
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研究分担者 |
吉村 俊朗 長崎大学, 医学部, 教授 (80182822)
江口 勝美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30128160)
調 漸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (40264220)
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キーワード | Lambert-Eaton筋無力症候群 / 傍腫瘍性小脳変性症 / P / Q型カルシウムチャネル / 自己抗体 / 剖検小脳 / オートラジオグラフィー / 小脳分子層 / 小脳プルキンエ細胞 |
研究概要 |
目的 PCD-LEMS発症における小脳P/Q型VGCCへの自己免疫的機序の可能性を検索するため、(1)剖検小脳のP/Q型VGCC定量的評価、(2)P/Q型VGCC-自己抗体複合体の存在の有無、(3)オートラジオグラフィーによる小脳内P/Q型VGCC分布の評価、(4)H&E染色および免疫染色による細胞数、リンパ球浸潤の評価、の各々について検討を行った。 方法 対象;コントロール剖検症例6例(LEMS症例1例を含む)およびPO-LEMS剖検症例3例。 方法;(1)剖検小脳のP/Q型VGCCの総量測定。-70℃で保存された剖検小脳をホモジナイズし、4%ジギトニンで可溶化し、P/Q型VGCC抽出液を調製した。次に抽出液に125I-ω-conotoxin MVIIC (3000cpm-90000cpm)を加え、GF/Fフィルターを用い放射活性を測定した。非特異的結合として、100倍量のω-conotoxin MVIICを用いた。P/Q型VGCC量は、ジギトニン抽出液の蛋白1mgあたりの特異的な1251-ω-conotoxin MVIIC結合量をfmolで表現し、各値よりスキャッチャード・プロットを作成した。理論上飽和された場合のP/Q型VGCC量に相当するBmax値を計算し、各小脳におけるP/Q型VGCC量とした。同様に小脳の電位依存性カリウムチャネル(VGKC)の量を測定した。 (2)PCD-LEMS症例における、剖検小脳P/Q型VGCCへ結合している自己抗体を「自己抗体-P/Q型VGCC複合体量」とみなし、P/Q型VGCC-抗体複合体の存在比率を計算した。(3)PCD-LEMS患者における小脳内P/Q型VGCCの分布の変動を探るために、オートラジオグラフィによる検討を行った。(4)一般病理学的定量、および免疫染色による小脳の各細胞層の細胞数および、リンパ球浸潤の検討をおこなった。 結果(1)6例のコントロール小脳のP/Q型VGCC量(Bmaxの平均±SEM;297.8±38.9fmol/mg, n=6)と比較し、PCD-LEMS患者3例では、P/Q型VGCC量の明らかな減少(63.0±7.0fmol/mg, n=3)が認められた(P<0.001).一方、小脳内VGKC量についてはLEMS患者で7.94±3.27fmol/mgに対し、コントロール6.38±1.38fmol/mgと有意差を認めなかった。 (2)自己抗体-P/Q型VGCC複合体:6例のコントロール小脳における自己抗体-P/Q型VGCC複合体の存在比率はいずれも10%以下であったのに対し、PCD-LEMS症例3例では上昇(患者1;+69.2%、患者2;+27.2%、患者3;+42.8%)していた。 (3)コントロール小脳では小脳分子層にP/Q型VGCCが高密度に存在するのに対し、PCD-LEMS症例では、同領域における結合の低下が認められた。画像解析による定量的な検討では、特に小脳分子層においてコントロール113.0±16.2ODに対し、PCD-LEMS患者では30.8±1.3ODとコントロールの30%にまで減少していることが示された。 (4)病理学的検討では、患者小脳Purkinje細胞の脱落は明らかであったが、顆粒細胞は、患者とコントロール間での細胞数に大きな差異は認められなかった。またH&E染色およびCD3、4、19、20による免疫染色では各層へのリンパ球浸潤は認められなかった。 考察 PCD-LEMS剖検症例の小脳分子層においてP/Q型VGCC量が選択的に減少している結果であった。さらに、一連の結果は、小脳P/Q型VGCCに対する自己抗体が小脳症状の発症機序に関与している可能性を強く示唆した。
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