家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の治療として肝移植が行われるようになり、肝臓を外科的にTTRの正常の遺伝子を持つものと置換するとFAPの臨床症状が進行しないことが明らかとなった。しかし、肝移植にはドナー不足や免疫抑制剤の終生の服用などの問題点のほか、例え肝移植を施行しても、網膜から産生される異型トランスサイレチン(TTR)により眼症状の進行を抑えることが出来ないことが判明した。 そこで、我々は、肝移植に代わる治療として、オリゴヌクレオチド(RNA/DNAオリゴヌクレオチド(ONs)、single-stranded oligonucleotides(SSOs))を用いた肝臓の異型TTR遺伝子を正常のTTRの遺伝子配列に修復する遺伝子治療を検討した。まず、HepG2細胞へのオリゴヌクレオチドのトランスフェクション効率をFugene6、ExGen500、アテロコラーゲンを用いて検討したところ、アテロコラーゲンによる方法が最も効率がよかった。 次に、アテロコラーゲンで包埋したONsおよびSSOsによるHepG2細胞における遺伝子変換率を検討したところ、ONsによる遺伝子変換はみられなかったが、SSOsを使用した場合に1%弱の遺伝子変換がみられた。そこで、0.1%および0.5%アテロコラーゲンと25-mer、45-mer、74-merのSSOsを用いてHepG2細胞における遺伝子変換の最適条件を検討したところ、0.5%アテロコラーゲンで包埋した74-merのSSOsを用いた系が約10%と最も高い変換率を示した。最後にSSOsによるin vivoでの遺伝子変換を検討したところ、家兎の眼において約1%、マウスの内因性のTTR遺伝子をVal30Metに変換したトランスジェニックマウスの肝臓において約8.7%の遺伝子変換を認めた。現在、in vivoでの遺伝子変換率の向上を図るために、更にBNA化したSSOsの開発およびdrug delivery system(DDS)の改善を検討しているところである。
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