研究概要 |
1)高力価ヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(HDAd)を作製と、mdxマウス骨格筋への遺伝子導入による病理変化の改善 HDAdは、昨年度報告した様に、P1バクテリオファージCre/loxP系にて作製した。ヘルパーウイルスのパッケージングシグナルをより詳しく調べ、新たなヘルパーウイルスhelperASwを作製した。このヘルパーウイルスにてHDAd作製時のヘルパーウイルス混入を0.01%以下に押さえられた。この方法にて既にLacZ, EGEP, dystrophin cDNA, coxsackie and adenovirus receptor (CAR) cDNA, acid maltase cDNAを複数組み込んだ5種類のHDAdを作製し、感染細胞で遺伝子が発現し機能する事を示した。何れのHDAdも第一世代アデノウイルスベクターと同程度の高力価を有し、in vivoにても効率良くマウス骨格筋に遺伝子導入が可能であった。導入効率が良いだけで無く、遺伝子発現期間も観察した期間で最長の約2ヵ月後におよんでいた。mdxマウスへの遺伝子導入ではdystrophinが機能し、骨格筋の壊死・再生像が減り、中心核の減少が明らかとなり、筋ジストロフィーの治療に遺伝子導入が有効である事が確認できた。今後はCARとdystrophinを同時にHDAdで発現させ、繰り返し導入やより効率的dystrophin発現を行う。 2)細胞親和性(tropism)変換 HDAdの成熟骨格筋はアデノウイルス感染に抵抗する。これを解決する為に、HDAdのカプシドタンパク質に変異を加えintegrinαvを介した経路でも骨格筋に遺伝子導入する事を目的にtropism変換HDAd (HDAd/RGD)を作製した。これを用いHDAdとHDAd/RGDの遺伝子導入効率を比較検討中である。
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