我々は、アデノウイルスゲノムがもつ全ての蛋白遺伝子を欠失させ、代わりに治療用遺伝子のみをもつヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(以下HDAV)を開発した。full-length dystrophinおよびマーカーLacZを含むHDAV LacZ-dysと、アデノウイルスのアタッチメントレセプターであるCARおよびfull-length dystrophinを含むHDAV CAR-dysの二種類のHDAVを作製した。免疫抑制を一切行わない条件下において、HDAV LacZ-dysを幼若なmdxマウスの骨格筋に注入したところ、注入8週後にもdystrophinの発現が高率に認められた。さらにdystrophin発現部位のみにおいて筋病理所見の改善が確認された。また、HDAV CAR-dysを成熟したmdxマウスの骨格筋に繰り返し注入したところ、反復探与によりdystrophinの導入効率が上がり、一定レベル以上のdystrophinの発現を長期間維持することができた。この方法により筋ジストロフィーに対する遺伝子治療の幅が広がると考えられる。
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