研究概要 |
眼咽頭筋ジストロフィーの発症機構を解明し,有効な治療法を開発する目的で,ヒトPABP2遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(Tg-mice)作製を試みた.当初はベクターとしてmuscle creatine kinaseを試案したが,再考し正常PABP2 cDNAと(GCG)_9を持つ変異PABP2 cDNAをそれぞれ心筋,骨格筋で強く発現するpCAGGSベクターにクローニングし,直鎖状にしたトランスジーンをマウス受精卵にマイクロインジェクションにて導入した.得られたTg-miceはPCR,サザンブロット解析にて導入遺伝子の有無を確認.その後F1以降のノザンブロット解析を行い導入遺伝子の発現解析を行った(本学発生医学研究センター:臓器形成分野との共同研究).その結果,正常PABP2 cDNAを発現しているC10 Tg-miceを2ライン,変異した(GCG)_9PABP2 cDNAを発現しているC13 Tg-miceを1ライン得た.通常のmicroinjection法にもかかわらず,得られる産仔数が少なく,transgeneの伝達度は予想より低かった.今後,line数樹立のため再度microinjectionを行い,各発現lineでの筋組織の解析を試みる予定である. また,本疾患における細胞死の機序を解明する目的で,cell modelの作製も平行して試みた(Cambridge大との共同研究).COS-7細胞にヒトPABP2-A10:(GCG)_6とPABP2-A17:(GCG)_<13>をEGFPのC端と融合させてtransfectし,expandしたA17の方が,野生型のA10より核内でPABP2蛋白が凝集しやすくなるのかどうか検討した.まず2μg DNA(高濃度)でtransfectすると,A17の方が異常凝集塊を強く形成したが,A10においても凝集が認められ,有意差を認めなかった.次に0.6または0.2μg DNA(低濃度)でtransfectすると,有意差を持って,A17では明らかに凝集塊=封入体を認めた.これら3種類の濃度のすべてでA17により強い細胞死を認めた.
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