研究概要 |
われわれは,沖縄県において成人発症の近位筋優位の筋萎縮,運動感覚神経障害,脊髄前角細胞脱落と後索障害,常染色体優性遺伝を示し,3q13領域に連鎖する新しい遺伝性運動感覚神経症(以下HMSN)家系17家系を見出し報告した(以下,沖縄型HMSN).また、共同研究者の梶らとともに,この沖縄家系に臨床的,電気生理学的特徴が極めて類似している大家系を滋賀県に見出した(以下,滋賀型HMSN). 沖縄型HMSNについて、本年度は3q13領域のBAC/PACコンティグを完成させ,その領域にある遺伝子Rho2,LOC131562,LOC131560,GPR15,Pro0641,C3orf4,WWP1,SMAG64,COL8A1,ST3GALVなどのシークエンスを行い、発症者と非発症者との比較検討を行った。いくつかのミスセンス変異が見つかったが、患者間で共通したものは認められなかった。現在、同僚域の1.3Mbを中心に検討している(中川)。また,候補遺伝子の検討と平行して,さらなる家系調査も行い,新たな発症者や新しい家系を見いだしている(納). 滋賀型HMSNについては,新たな2家系を見いだした。現在、さらに詳細な家系調査と遺伝子解析のため採血をインフォームドコンセントを得た上で行っている(梶).すでにDNAが採取された患者および正常同胞を対象として、全染色体領域をカバーするCAリピートマイクロサテライトDNAマーカーセットを用いて疾患遺伝子座のマッピングを行っている(中川).現在までのところ、沖縄型HMSN遺伝子座との関連も否定できないため、両HMSN家系は同一の遺伝子異常である可能性も考えて検討中である.一日でも早く,両疾患の原因遺伝子を明らかにし,その分子病態の解明と治療法の開発を目指したい.尚,この間,本研究と関連する疾患についての研究成果を論文にて発表した.
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