研究概要 |
われわれは,沖縄県に多発する成人発症近位筋優位の運動感覚神経障害を示し,3q13領域に連鎖する新しい遺伝性運動感覚神経症家系を報告した(以下,沖縄型HMSNP).また,この沖縄家系に臨床的,電気生理学的特徴が極めて類似している大家系を滋賀県に見出した(以下,滋賀型HMSNP).沖縄型HMSNPについて,3q13領域のBAC/PACコンティグを完成させ,その領域にある候補遺伝子のシークエンスを行い,発症者と非発症者との比較検討を行った.現在,同僚域の1.3Mbを中心に候補遺伝子の検討を行っている.滋賀型HMSNPについては,新たな2家系を加えて家系調査と遺伝子解析のため採血をインフォームドコンセントを得た上で行った.DNAが採取された患者および正常同胞を対象として,全染色体領域をカバーするCAリピートマイクロサテライトDNAマーカーセットを用いて疾患遺伝子座のマッピングを行った.その結果,沖縄型HMSNPでも連鎖を認めるDNAマーカーで,lod score 3以上を示した.また,ハプロタイプ解析においても発症者は共通するハプロタイプを示した.したがって,沖縄型と滋賀型HMSNPの原因遺伝子は,第3染色体上の共通の遺伝子座にマッピングされる可能性が示唆された.両病型ともに,家族性筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症との鑑別を必要とする疾患であり,沖縄家系,滋賀家系の分子病態の解明は,他の神経原性筋萎縮症の病態解明にも重要な知見を与えるものと考える.以上より、本研究はわが国で発見された新しい遺伝性運動感覚神経症の分子病態解明と治療法の開発を進める上で、きわめて有益であった.
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