研究概要 |
平成14年度までの検討は事象関連電位を応用してきたため,小脳の認知機能への影響評価に運動タスクがもたらす大脳機能賦活の重畳があったことは否めない.この点を明確にするために平成15年度は,運動タスクのかからない,背景脳波(EEG),聴覚誘発中潜時反応(MLR)を正常者と比較し検討した.前年度と同様対象は脊髄小脳変性症のうち病変が小脳に限局する皮質小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy;CCA)患者とし,背景脳波,聴覚誘発中潜時反応(MLR)を正常者と比較し,検討した.安静閉眼時の背景脳波を,20チャンネルの電極から記録,128Hzでサンプリングしたのち2秒のエポックを抽出した.さらに,全電極から作成したトポグラフィーをt mapとGlobal Field Power (GFP)を算出し検討した.また,MLRも20チャンネルの電極から250Hzでサンプリング記録し,従来の報告に準じ,Czから得られたそれぞれの成分の頂点潜時ならびに振幅を測定し,さらにGFPによる検討を行なった.以上の検討に加え,Low Resolution Electromagnetic Tomography (LORETA)にて,背景脳波およびMLRについてCCAと正常者の2394それぞれのボクセルごとにCCAと正常者とのt検定を行なった.MRIの定量的評価としてOsiris softwareをもちいて,解剖学的指標とした.これらの検討の結果,CCA患者では正常者に比しBrodmann area 6での活動性が有意に低下していることを明らかにした((Arai M, Tanaka H, Pascual-Marqui RD, Hirata K.Clin Neurophysiol 114:740-747,2003).
|