研究概要 |
ヘルペス脳脊髄炎の発症におけるMCP-1の免疫制御作用 マウスのヘルペス脳炎モデルにおいてTh2サイトカイン(IL-4)が感染を増悪させることが報告されている.我々はBALB/cマウスを用いてヘルペス脳脊髄炎モデルを作製し,脳脊髄炎発症におけるMCP-1の役割とTh2サイトカインとの関連を検討した.HSV感染日,2,4日後に抗MCP-1抗体をマウス腹腔に投与したところ.生食を投与した対照群に比し脳脊髄炎の進行が抑制され,これらのマウス由来の髄液細胞のIL-4産生量が低下した.脳脊髄炎マウス由来の髄液中マクロファージは大量のMCP-1を産生し,正常T細胞はこのマクロファージとの混合培養によりIL-4産生が増加し,これは抗MCP-1抗体により阻害された.以上よりMCP-1はTh2反応を誘導してマウスのヘルペス脳脊髄炎を悪化させることが示唆された. ウイルス性髄膜脳炎における髄液ケモカインの検討 単純ヘルペス脳炎を含むウイルス性脳髄膜炎11例,多発性硬化症21例,対照(非炎症性中枢神経疾患)10例より採取した髄液72検体について,ELISAキットを用いてIL-8,MCP-1,MIP-1α,RANTESの4種のケモカインを測定し,各種ケモカインの意義を検討した.ウイルス性髄膜脳炎の4種のケモカイン値はいずれも対照に比べ有意に上昇し,多発性硬化症は両者の中間値であった.多発性硬化症のMIP-1α/MCP-1比は対照に比し高値であったのに対しウイルス性脳髄膜炎は対照と差が見られなかった.経過を追えたウイルス性髄膜脳炎4例においては症状の改善のともにIL-8値とMCP-1値が低下した.これらケモカインはウイルス性髄膜脳炎の病態における免疫制御の一端を担い,髄液IL-8,MCP-1値は活動性と治療効果の指標になり,各ケモカイン値の比較が疾患の鑑別に有用であると考えられた.
|