研究概要 |
単純ヘルペス脳脊髄炎の発症におけるTh1/Th2バランスの影響とケモカインとの関連 BALB/cマウスを用いてヘルペス脳脊髄炎モデルを作製し,HSV感染日,2,4日後にTh2サイトカインであるIL-4とIL-10をマウス腹腔に投与し,脳脊髄炎の重症度と死亡率に与える影響を検討した.Th2サイトカイン投与量,各0.1〜1000μg/マウス/日の範囲では,10μg/マウス/日という比較的低量投与で最も死亡率が高く(対照群25%から75%に上昇),投与量依存的ではなく至適量が存在した.また,このTh2サイトカイン誘導にはマクロファージから産生されるケモカインMCP-1によるところが大きいことがわかった.大量のサイトカインが産生されるような状況よりも,ストレスや軽微な感染症の合併など,サイトカインバランス(Th1/Th2など)の不均衡が単純ヘルペス脳脊髄炎を初めとする種々の中枢神経感染症の発症,重症度に影響を与えるものと考えられた. 中枢神経感染症・炎症性疾患におけるケモカイン・ケモカインレセプターによる免疫ネットワークの形成 ヘルペス脳炎など中枢神経感染症や多発性硬化症など中枢神経炎症性疾患では病変部においてケモカインが局所で産生され,白血球の誘導や免疫制御に働くことがわかってきた.ケモカインに誘導され末梢から中枢神経内に侵入する白血球(とくにリンパ球)には種々のケモカインレセプターが発現している.近年,Th1細胞にはケモカインレセプターCCR5,CXCR3,Th2細胞にはCCR4,CCR3が発現していることが判明している.我々はTh1 diseaseである多発性硬化症患者の髄液中ケモカイン,末梢血T細胞上のケモカインレセプター発現率を解析したところ,患者の髄液中にはTh1反応に関連するIP-10,MIP-1αというケモカインが多く含まれ,末梢血にはCXCR3を発現するCD4T細胞,即ちTh1細胞の比率が上昇し,これらの傾向は多発性硬化症の活動性と共に増強することも判明した.ケモカインはサイトカインと密に免疫ネットワークを形成し,種々の病態に関わっている.
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