研究概要 |
パーキンソン病やレビー小体型痴呆などのいくつかの神経変性疾患の特徴的所見としてα-synuclein(α-Syn)のレビー小体への沈着があり、そのようなα-Synの異常蓄積が神経変性と関連すると考えられている。我々はこのα-Syn沈着の分子機構を解明することを目的として,yeast two-hybrid systemを用いてα-Synと結合するタンパクをスクリーニングした.その結果、新規遺伝子の一部が得られ、全長cDNAをクローニングして、αSNBP(α-synuclein binding protein)と命名した。この新規遺伝子は463アミノ酸からなるタンパクをコードしており、そのmRNAは脳を含め各組織に発現していた。C末部にV5タグを付加したαSNBPをトランスフェクトした細胞ではαSNBPは約60kDaのタンパクとして発現した。αSNBPとα-Synを安定的に発現するヒト神経芽細胞腫細胞を作製し、その細胞質画分を用いてV5抗体あるいはα-Syn抗体による共役免疫沈降を行ったところ、細胞内で両タンパクが結合していることが示唆された。さらに、V5抗体、α-Syn抗体による2重免疫蛍光染色により両タンパクが共存していることを示唆するデータが得られた。 次にαSNBPのN末側ペプチドに対する特異抗体を用いて、ヒト剖検脳組織を免疫染色し、その分布やレビー小体などの異常構造物との関連を調べた。染色強度にバラツキはあるが、神経細胞の細胞体、突起が陽性に染色されることが判明した。 以上新規α-Syn結合タンパクとしてαSNBPを同定した。αSNBPのα-Syn沈着への関連については結論が得られていないが、αSNBPが神経細胞に存在することから、α-Synと何らかの機能的関連を持つ可能性がある。
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