(1)ヒト心筋Naチャネルトランスジェニックマウス(TGM)の確立 遺伝子導入用ベクターPGL-MHCSvPaに正常ヒト心筋Naチャネルαサブユニット(hH1)またはBrugada症候群の変異Naチャネル(T1620M)cDNAを組み込み、定法にしたがってB5C3F1マウス受精卵にインジェクションし、hH1を2系統、T1620Mを2系統、TGMを確立した。ヒト心筋Naチャネルの特異的なプローブを用いたin situ hybridizationでトランスジーンが心筋に特異的に発現していることを確認した。 (2)心電図解析 Brugada症候群患者ではNaチャネルブロッカーよってST上昇が認められるが、本TGMではST上昇・不整脈なども認められなかった。Brugada症候群患者では電気刺激によって心室細動が高率に誘発されるので、麻酔開胸下で誘発試験を行った。正常マウスでは電気刺激で持続性不整脈が誘発されることはないが、T1620MのTGMでは多型性心室頻拍を誘発することができた。自然発生の致死性不整脈はみられないため、Brugada症候群のモデルマウスとしては適当でないかもしれないが、不整脈基質は有するモデルであることが判明した。本TGMにおける不整脈の詳細に関する研究は現在も続行中であるが、トランスジェニック動物種の検討、細胞生理学実験のためにGFPなどのマーカータンパクを共発現するTGMの作成やKnock-in mouseの作成など、Brugada症候群の適切なモデル動物を作成するためには、より一層の技術改良が必要であると考えられた。
|