ラット心筋細胞においてジアシルグリセロールα、ε、ζの発現を我々は初めて確認した。ラットの実験的心筋梗塞後に梗塞部位では、顆粒球およびマクロファージにおいてジアシルグリセロールキナーゼζの高度の発現がみられた。非梗塞部位においては、ジアシルグリセロールε、ζの両者の発現がみられたが、シャム手術群に比較して、ジアシルグリセロールεの発現が有意に低下していた。アンジオテンシン変換酵素阻害薬カプトブリルによる治療により、εの発現が回復し、これに伴い心室リモデリングが抑制されることを初めて明らかとした。(Takeda M et al. Gene expression and in situ localization of diacylglyc erolkinase isozymes in normal and infarcted rat hearts : Effects of captopril treatment. Circ Res 2001;89:265-272.)。 心肥大・心不全におけるジアシルグリセロール/ブロテインキナーゼC系の調節機構を明らかにするためには、ジアシルグリセロールキナーゼのみならず、反応を逆向きに進めるフォスファチジン酸フオスファターゼの発現も検討することが必要となる。我々は上行大動脈狭窄ラットを用いて、肥大心におけるジアシルグリセロールキナーゼおよびフオスファチジン酸フォスファターゼの発現を検討した。この結果、代償期の肥大心において、ジアシルグリセロールキナーゼεは発現が抑制され、フォスファチジン酸フオスファターゼの発現は変化していないことがわかった。
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