研究課題/領域番号 |
13670689
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 尋史 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50323572)
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研究分担者 |
佐田 政隆 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
青柳 昭彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10251240)
杉浦 清了 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10272551)
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キーワード | 筋収縮 / 分子生物学 / ミオシン / カルシウムイオン / アデノウイルス / カーボンファイバー / 心筋 |
研究概要 |
ミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化が進展活性化現象(stretch-activation phenomenon)に重要な役割を果たしているという研究結果から、筋細胞の負荷センサーとしてのMLCの役割が示唆されている。本研究では、この機能仮説を検証すべく、培養心筋細胞に遺伝子組み換え変異MLCを発現させ、心筋細胞の負荷条件をコントロールしながら、収縮張力と細胞内Ca濃度を同時計測するシステムを構築した。 1、細胞に遺伝子組み換えタンパクを発現させる系の確立 ラットより無菌的に心筋細胞を単離し、ペーシングにより収縮する能力を維持しつつ1週間培養した。本研究では、遺伝子組み換え変異MLCを発現している細胞を識別し、その1個の細胞の収縮・弛緩機能を評価することを目標とする。このため、緑色蛍光タンパク(green fluorescent protein ; GFP)をリポーター遺伝子として発現カセットを組み込んだシャトルベクターを用いた。相同組み換えにより得られたアデノウィルスを培養心筋細胞に感染させると、GFPの細胞内発現が観察され、目的の遺伝子組み換えタンパクを発現している細胞を正確に識別することが可能になった。 2、1個の心筋細胞の収縮機能と細胞内Ca濃度を同時計測する系の確立 カーボンファイバーの表面は帯電しているため、筋細胞膜に付着することは知られていたが、従来用いられていた表面が平滑なファイバーと異なり、表面に多数の凹凸を有するファイバーを開発した。このファイバーは心筋細胞膜と接触する面積が大きいため、心筋細胞の表面に軽く接触させるだけで、容易にしかも強固に細胞膜に付着する。心筋細胞の1端に固定用の太くて固いファイバー、もう1端に計測用の細く柔軟なファイバーを付着させ、電気刺激による細胞収縮に伴う細いファイバーの歪みから、1個の心筋細胞の収縮力を計測した。収縮と同期して太いファイバーの位置をコントロールすることにより、筋長を変化させながら同時に張力を計測することが可能な系を確立した。収縮中の心筋細胞内Ca濃度の計測には、Indo-1を用いて2波長計測することにより、motion artifactを除外した。生体内では、心筋細胞は1回の収縮弛緩サイクル中に筋長と張力が経時的に変化して力学的仕事を産み出しており、この系の開発によりin vivoと類似した負荷条件下で心筋細胞に力学的仕事をさせながら、心筋細胞の収縮・弛緩機能と細胞内Ca濃度を同時に評価することが可能になった。
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