研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)、PAMPは共通の遺伝子より産生される降圧ペプチドである。今回我々は発生工学的手法を用いアドレノメデュリン単独ノックアウトを作成しその生理作用を検討した。AMノックアウトマウスは胎生致死であり、ヘテロ接合体を用いて検討した。 ヘテロ接合体の血庄は野生型と差を認めず、各種血圧調節因子が絡んで血圧のホメオスターシスは保たれていると考えられた。アンジオテンシンII、8%食塩食負荷を行ったところ、冠動脈は内膜の増殖、外膜の増殖が著明であった。ヘテロ接合体では病変部位で酸化ストレスが著明に増加することを電子スピン共鳴法、3-nitrotyrosine染色、尿中イソプロスタン排泄量、及び80HdG排泄量にて確認した。一方AMはアンジオテンシン、食塩負荷により野生型では増加するが、ヘテロ接合体では増加しなかった。このことから、AMは食塩、アンジオテンシン負荷による酸化ストレスに拮抗する内因性の物質であり、酸化ストレスによる臓器障害に防御的に作用する因子である可能性が示唆された。(Shimosawa T. et al. Circulation,2002) 加齢により酸化ストレスが増大することが知られており、本研究でも1年齢のヘテロ接合体について検討したところ、やはり酸化ストレスの増大と共に、骨格筋におけるインスリン抵抗性が発症した。このインスリン抵抗性がAM投与、抗酸化物質投与にて改善することを明らかにし、生活習慣病発症における酸化ストレスとAMの関係について明らかにした。(Shimosawa T et al. Hypertension,2003) また、アンジオテンシンII投与により酸化ストレスを増大させるモデルにおいても、若年齢でインスリン抵抗性が発現することを明らかにした。(Xing G. et al. Endocrinology in revision) さらにAMの抗酸化作用を明らかにする目的で、低酸素モデルにおける肺血管リモデリングとの関連を検討し、AM欠損マウスでは肺血管障害が著明で、且つ酸化ストレスがその病変に関与することを明らかにした。(Matsui H. et al. Circulation in press) 一方、AMの治療効果を見る目的で大動脈カフモデルによる血管障害にAMを局所投与してその効果を検討したところ、酸化ストレスの軽減と血管障害の改善を認めた。(Kawai J. et al. Circulation,2004)
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