ストレス定量化因子の発見と評価に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670694
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 上原 譽志夫 東京大学, 保健管理センター, 助教授 (40184965)
• 研究分担者: 根来 秀行 東京大学, 医学部, 医員 ; 田口 理恵 東京大学, 保健管理センター, 助手 (90301126)
• キーワード: ストレス / プロスタグランジン / 記銘障害 / 運動負荷 / 高食塩食 / 脳脊髄液 / 交感神経 / 臓器障害

研究概要

本研究ではストレス状態を客観的な数値として把握する方策を探求することを目的としてきた。Lipocalin-typeプロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)は脈絡膜から脳脊髄液中に分泌された後、血中に流れ込み、最終的には腎臓から排泄される。したがって、血中及び尿中L-PGDSがストレスの指標として有用であるか否かについて検討した。
数々のストレス状態でのL-PGDSの動態を検討するために、まず始めに腎実質障害のような交感神経活性が亢進している場合について、L-PGDSの血中濃度と尿中排泄量を検討したところ、いずれの指標も有意に上昇することを報告した(Hiwara et al. : Nephron 2001 ; 87 : 321)。また、本態性高血圧患者のように易ストレス性と考えられる疾患郡群についてこれらの指標の状態を検討したところ、正常血圧者に比較して有意に尿中L-PGDS排泄量が増加していることを見出した(Hirawa et al. : Hypertension 2002 ; 39(2, part2):449-454).
このようなストレスとL-PGDSとの関連は、実験動物においても検討しており、強制運動ストレス下においたマウスについて、血中及び尿中排泄量を検討したところ、強制運動負荷マウスでは心臓筋重量の増大とともに尿中L-PGDS排泄量が増加した(未発表)。ヒトにおいても、運動負荷による交感神経刺激で血中濃度が増加することを見出した(未発表)。
次に、食塩の過剰摂取を1年間にわたり正常血圧ラットに強制し、味覚および体液量増加のストレスをかけたところ、尿中L-PGDS排泄量は増大し、かつ正常食ラット(非ストレスラット)に比較して認知機能が有意に低下していることを見出した(未発表)。

研究成果

• [文献書誌] Hirawa N, et al.: "Urinary prostaglandin D synthase(b-trace)excretion increases in the early stage of diabetes mellitus"Nephron. 87. 321-327 (2001)
• [文献書誌] Hirawa N, et al.: "Lipocalin-type prostaglandin D synthase in essential hypertension"Hypertension. 39・2. 449-454 (2002)
• [文献書誌] Hamano K, et al.: "Excretion of prostaglandin D synthase in diabetic patients"Nephron. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] Negoro H, et al.: "Endogenous prostaglandin D_2 synthesis is associated with an increase in plasminogen activator inhibitor-1 generation in bovine endothelial cells"J Hypertens. (印刷中). (2002)