心筋細胞において筋小胞体(SR)からのCa^<2+>依存性Ca^<2+>放出(CICR)は、Ca^<2+>trasient(CaT)の大部分を構成している。FK-binding protein(FKBP)は、SRのryanodine receptor(RyR)に結合し、SRからのCICRを制御している。免疫抑制剤のFK506はFKBPをRyRから解離させてRyRの不安定な開口を促進し、SRからの過剰なCa^<2+>漏出をきたす。最近、FKBPのRyRからの解離が不全心筋におけるCa^<2+>代謝障害の一因として注目されている。我々は、共焦点レーザー顕微鏡を用い。蛍光色素を負荷したrat心室筋細胞において、電気刺激時のCaTとCa^<2+>sparkを、またcaffeine負荷時のCaTの振幅によりSRのCa^<2+>含量を測定し、これらに対するFK506の効果を検討した。結果は、(1)FK506(50μM)は定常電気刺激時のCaTの振幅とCa^<2+>sparkの頻度を増大させたが、静止後のCaTとSRのCa含量は変化させなかった。(2)thapsigarginによるSRのCa^<2+>ATPase(SERCA)阻害、または低濃度Ca^<2+>(0.1mMCa^<2+>)の灌流による細胞膜Na^+/Ca^<2+>交換を介するCa排出の促進により、電気刺激時のCaTと静止後のSRのCa^<2+>含量は有意に低下したが、FK506はこの低下に影響を及ぼさなかった。(3)thapsigarginと低濃度Ca^<2+>液の同時灌流では、電気刺激時のCaTは低下したが、FK506はCaTをさらに低下させ、Ca^<2+>sparkの頻度を増加させた。また、個々のCa^<2+>sparkの持続時間を延長させた。静止後のSRのCa^<2+>含量は、FK506により有意に低下した。以上より、FKBPの解離は、正常の興奮収縮連関への影響は少ないが、不全心で認められるSERCAの低下とNa^+/Ca^<2+>交換の代償性活性化がともに存在すると、SRからのCa^<2+>漏出を増加させることにより、SRのCa^<2+>含量を低下させて収縮力低下の一因となりうることが示された.
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